横浜の街を舞台に、タカ(鷹山敏樹/舘ひろし)とユージ(大下勇次/柴田恭兵)のスタイリッシュな活躍を描いた刑事ドラマの金字塔『あぶない刑事』。バブル前夜の1986年に放映を開始した本作において、ふたりの相棒として絶対的な存在感を放ち続けたのが、数々の覆面パトカーたちでした。
なかでも日産レパードは、単なる劇用車の枠組みを超え、作品のアイコンとして日本車の歴史に深く刻まれています。シリーズの節目ごとに登場した名車たちは今どこでどう息づいているのか。ナンバープレートに隠された秘密や迫真のカースタント秘話、さらには現在の驚くべき中古車市場の実態まで、その軌跡を一気に紐解きます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:代名詞となった日産レパードF31型は、前期型のゴールドツートンから後期型ダークブルーまで、タカとユージの走りを支えた絶対的エース。
- 要点2:象徴的な港303ナンバーをはじめ、セドリック港304や最新作の日産GT-Rまで、歴代劇中車は綿密な設定と激しいスタントで輝きを放った。
- 要点3:現存する劇用車の一部は日産ヘリテージコレクションや専門店で大切に保存され、劇中車のカリスマ的人気から中古車市場では1000万円超えのプレミア化が進行中。
【不動の主役】あぶない刑事レパード(日産レパードF31)の伝説とゴールドツートンの衝撃
『あぶない刑事』の代名詞といえば、誰が何と言おうと日産レパードF31です。1986年のテレビシリーズ第1作で登場した前期型「アルティマ(UF31型)」は、ハイソカーブームを牽引していたトヨタ・ソアラの独走を食い止めるべく日産が総力を挙げて投入した高級パーソナルクーペでした。
なかでも強烈なインパクトを残したのが、上品さと色気を兼ね備えたレパードゴールドツートン(正式名称:ゴールドメタリックツートン)のボディカラーです。VG30DE型3.0リッターV6 DOHCエンジンが奏でる野太いサウンドとともに、横浜・山下公園周辺の舗装路を滑るように疾走する姿は、従来の泥臭い刑事ドラマのイメージを一変させました。
続編『もっとあぶない刑事』では、マイナーチェンジを受けた後期型レパード「アルティマターボ」へとバトンタッチ。ボディカラーは精悍なダークブルーへと変わり、新開発のVG30DET型セラミックターボエンジンによって暴力的な加速力を手に入れました。ユージがシフトノブを叩き込むように操作し、タカが助手席のドアを開けてショットガンを構える一連のシークエンスは、昭和から平成のポップカルチャーを語るうえで外せない伝説のシーンです。
【劇中車の謎】「港303」ナンバーの秘密とセドリック港304など脇を固めた名車たち
ファンなら暗唱できるほど有名なのが、無線呼出符号「港303」を冠したレパードの登録ナンバーです。テレビシリーズ初期にゴールドツートンのレパードが付けていたのは「横浜33 も 54-80」。その後、後期型へのスイッチや映画版の公開に伴って「横浜33 つ 11-13」へと変化するなど、マニアの間ではナンバープレートの変遷そのものが研究対象となっています。
さらに見逃せないのが、主役の背後で港署の捜査網を支え続けたあぶない刑事歴代車種の存在です。パパさん(吉井勇次/山西道広)やナカさん(中島貞夫/ベンガル)がステアリングを握り、現場へ急行する日常の足として活躍したのがセドリック港304(Y30型およびY31型セドリック/グロリア)でした。
ほかにも、薫(浅野温子)が乗り回した赤い日産エスカルゴ、トオル(町田透/仲村トオル)が乗るR31型スカイライン(4ドアハードトップ)、さらにはA31型セフィーロやC33型ローレルなど、80年代後半から90年代初頭にかけての「技術の日産」を象徴する名車たちが隙間なく画面を埋め尽くしていました。港署の駐車場は、まさに当時の日産自動車ショールームそのものだったのです。
【圧巻のアクション】CGなしの劇用車カースタントが生んだ名場面の舞台裏
近年の映像作品のようなCG合成が一切存在しなかった当時、『あぶない刑事』のカーアクションを成立させていたのは、職人集団による命懸けの劇用車カースタントでした。担当したのは、数々の映画や刑事ドラマで伝説を残してきた「三石スタント(現・スーパードライバーズ)」。彼らが繰り広げるドライビングテクニックは、まさに神業の領域に達していました。
狭い倉庫街の路地を猛スピードで駆け抜け、交差点直前で一気にリアを流すJターンやサイドターン。さらには埠頭の跳ね橋や段差を利用した大ジャンプまで、本物の車体を極限まで痛めつけながら撮影が敢行されました。当然ながら、撮影用にはメインで美しく映し出される「本車」のほかに、スタント時の衝突や転覆を受け止める「スタント用(潰し)車両」が複数用意されていました。
現場では足回りを強化し、デフロックを施すなどの特殊な改造が施され、ハードなアクションに耐えうる劇用車が仕立てられていました。エンジン音を響かせながら白煙を上げ、タイヤの焦げる匂いまで伝わってきそうな生々しい走行描写こそが、視聴者を画面に釘付けにした原動力です。
【映画最新作まで】『帰ってきたあぶない刑事』劇中車と日産GT-Rが放つ新たな輝き
前作『さらば あぶない刑事』(2016年)でニュージーランドへと旅立ったふたりが、8年の歳月を経て探偵として横浜に帰還した映画『帰ってきた あぶない刑事』(2024年)。劇中では、長年のファンを唸らせる素晴らしい劇中車の共演が実現しました。
まずスクリーンに登場し観客の胸を熱くさせたのは、やはりあのゴールドツートン仕様のF31レパードでした。現代の横浜みなとみらいの風景のなかに突如として現れる80年代の美しいクーペフォルムは、タイムスリップしたかのような強烈な哀愁と格好良さを放ちます。
そして、劇中で新たな主役級の暴れっぷりを見せたのがあぶない刑事日産GTRです。劇中に投入されたのは、日産が誇る世界的スーパースポーツの最高峰「NISSAN GT-R NISMO(R35型 Special edition)」。圧倒的なロードホールディングと最高出力600馬力オーバーのパワーを誇るモンスターマシンを駆り、銃撃戦をかいくぐるタカとユージの姿は、年齢を感じさせないキレ味抜群のアクションとして世界中のファンを魅了しました。
【保管場所の真相】あぶない刑事劇用車の現在と日産ヘリテージコレクションの実態
激しい撮影を生き延びたあぶない刑事劇用車の現在はどうなっているのか。長年ファンの間で囁かれていた疑問の答えは、神奈川県座間市にある日産の聖地日産ヘリテージコレクションにあります。
座間事業所内の施設には、日産の歴史を彩ったレーシングカーや歴代市販車約300台が動態保存されていますが、その一角に『もっとあぶない刑事』で使用された後期型ダークブルーのF31レパード(アルティマターボ)や、『さらば あぶない刑事』で活躍したR35 GT-Rプレミアムエディションが、劇中仕様のナンバープレートとともに大切に保管されています。
一方で、初代テレビシリーズを駆け抜けた前期型ゴールドツートンの劇用車本体は、当時の激しいアクションや経年劣化によって廃車・解体された個体も少なくありません。しかし、その魂は失われていませんでした。神奈川県平塚市にあるレパード専門店「カーショップフレンド」をはじめとする熱狂的なプロショップの手によって、当時の劇用車と寸分違わぬディテールを持つ車両が丹念にフルレストアされ、イベントや最新作の撮影へと提供され続けています。
【市場の過熱】レパード中古車相場高騰のウラ側|なぜ1000万円超えのプレミアムが付くのか
映画のヒットや世界的なネオクラシックカーブームと連動し、現在の中古車市場で凄まじい事態が起きています。それがレパード中古車相場高騰です。1990年代後半から2000年代初頭にかけては数十万円から手に入ったF31型レパードですが、現在は状態の良い車両であれば500万円から800万円、極上車やターボモデルともなると1000万円を軽々と超えるプライスタグが掲げられています。
価格が高騰している主な理由は以下の3点に集約されます。
- 劇中車レプリカ需要の爆発:「ゴールドツートン」または「ダークブルー」へのオールペイント需要が高く、劇中仕様に仕上げられた個体は国内外の富裕層コレクターから指名買いが入る。
- 絶版部品の枯渇:発売から35年以上が経過し、純正パーツの多くが製廃(製造廃止)。内外装のモール類やダッシュボードの割れを防ぐ補修パーツの維持費がそのまま車両価格に反映されている。
- 北米25年ルールによる海外流出:アメリカの輸入規制(25年ルール)をクリアしたことで、JDM(日本内需仕様車)カルチャーに熱狂する北米バイヤーがインフィニティM30の兄弟車として買い付けを進めている。
もはや単なる中古車ではなく、動く美術品・文化遺産としての価値を獲得したF31レパード。手に入れるハードルは極めて高くなっていますが、それこそが『あぶない刑事』という作品が遺した熱量の大きさを何よりも物語っています。
【あぶない刑事の車】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:初代『あぶない刑事』でタカとユージが乗っていたレパードの正確なグレードとカラーは?
A1:1986年式の日産レパード 2ドアクーペ「アルティマ(F31前期型)」です。エンジンは3.0リッターV6のVG30DE型(NA)を搭載しており、ボディカラーは「ゴールドメタリックツートン」でした。
Q2:「港303」のナンバープレートは公道をそのまま走っていた本物ですか?
A2:劇中で映し出される「横浜33 も 54-80」などのプレートは、撮影用に製作された劇用プレートです。公道での移動や走行時には、道路運送車両法に基づき正規登録された本物のナンバープレートを装着して運用されていました。
Q3:日産ヘリテージコレクションで保管されている劇中車は見学できますか?
A3:神奈川県座間市の日産ヘリテージコレクションにて定期的に開催されている一般見学会(完全予約制)で見学が可能です。『もっとあぶない刑事』の後期型レパードや映画版GT-Rなどが展示エリアに並ぶ姿を間近で鑑賞できます。
まとめ:時代を超えて走り続ける『あぶ刑事』劇中車が遺した熱狂
『あぶない刑事』に登場した車たちは、単に主人公たちを現場へ運ぶ移動手段ではありませんでした。排気音ひとつで危険の接近を告げ、スキール音とともに危機を脱する、まさに「3人目の主人公」と呼ぶべき存在でした。
四角くシャープなF31レパードのノーズが夜の横浜を切り裂くシーンは、何十年経っても色あせることのない美学に満ちています。最新鋭のハイテクマシンである日産GT-Rへとバトンが渡された後も、ファンが愛してやまないのは、あの金属とガソリンの匂いが立ち込めるアナログな熱気です。名車たちが放った輝きは、これからも映像と語り継がれる記憶のなかで、アクセル全開のまま走り続けていきます。 (出典: あぶない 刑事 車(Yahoo!ニュース))